動脈狭窄・閉塞


          1).頚部内頚動脈狭窄/閉塞

          2).頭蓋内動脈狭窄/閉塞


約1.2-1.5㎏の脳を栄養する血液が流れる血管は、頚のレベルには4本(左右2本ずつ)あります。内頚動脈(左右1本ずつ)と椎骨動脈(左右1本ずつ)です。内頚動脈が脳の約70%、椎骨動脈が約30%を栄養します。

頚部内頚動脈は、総頚動脈から枝分かれした血管になりますが、この部分に動脈硬化による狭窄が生じたり閉塞を来す事があります(※1)。また、脳のレベルになると、内頚動脈や椎骨動脈より枝分かれした頭蓋内動脈(前大脳動脈・中大脳動脈・後大脳動脈)が走行しています(左右1本ずつ)。この主な血管のうち、真ん中に位置する中大脳動脈(※2)は、他の血管と比べて狭窄や閉塞になりやすく、頚部内頚動脈の場合と同じように脳梗塞の原因になる事があります。


加齢や余分な血液中のコレステロール、高血圧、喫煙、糖代謝異常などにより動脈の壁が厚くなったり、硬くなり血管の構造が壊れてしまい働きが低下する状態を「動脈硬化」と言います。これによって血管の狭窄が生じたり、進行したり、閉塞となることが脳梗塞の原因となります。

血管内腔の状態によっては(粥状変化)、血栓が生じて流れていくことがあります。狭窄の程度(強いと閉塞)によっては、流れていく血液が少なくなり、血管のすみまで血液がいきわたらなくなり脳梗塞を発症する事もあります。


治療


頚部内頚動脈狭窄の場合は、狭窄度が50%を超えると薬物治療(抗血小板薬)の内服と熟練した医師による手術(頚部内頚動脈内膜剥離術;CEA)が、脳卒中のガイドラインで奨励されています。80%以上の狭窄で手術のリスクが高い状態である際は、薬物治療(抗血小板薬)に加えて経皮的血管形成術(ステント留置術;CAS)も妥当な選択とされています。画像検査(頭部MRI)で、狭窄病変が原因と思われる脳梗塞と診断され、明らかに再発する可能性が高いと診断された場合は、症例ごとで治療方針は異なる事があります。

 

中大脳動脈狭窄の場合では、これといって良い治療法は確立されていません。薬物治療(抗血小板薬)や手術(バイパス術)のどちらが有効であるかというエビデンスがありません。しかし、脳の血管予備能が低下していると診断された時は、手術(バイパス術)が有効であるという報告があります。

 

動脈狭窄/閉塞は、一側とは限らず両側である場合、1本だけではなく他の主幹血管の多数に認められる場合、心臓にも動脈硬化性病変(冠動脈狭窄/閉塞)が認められる場合もありますので、個々の症例により治療方針をたてることになります。

 

いずれにせよ、動脈硬化の「危険因子」である ① 高血圧、② 高脂血症、 

③ 喫煙、④ 肥満、⑤ 糖尿病(特に①-③)についての改善が必要です。

 

 


頚部内頚動脈狭窄の治療

頚部内頚動脈内膜剥離術

(Cartid endarterectomy;CEA)

経皮的血管形成術

(ステント留置術;CAS)




頚(くび)を直接切開して、総頚動脈を露出させます。さらに、内頚動脈の分岐部を確認して動脈を切開、動脈硬化によって肥厚した内膜病変を取り除きます。


【摘出された内膜病変】

病変には、斑状の肥厚が認められます。主に粥状硬化(じゅくじょうこうか)と呼ばれる、内膜への白血球の浸潤や細胞増殖、コレステロールの蓄積などが認められます。

 

血管からカテーテルと呼ばれる管を足の付け根から挿入し、血管内から病変部にステントと呼ばれる金属性のメッシュ状の筒を留置しバルーンで拡張させて固定します。血管内治療の専門医が行います(手術専門の私は行っていません)。