聴神経腫瘍は、聴神経からできる腫瘍です。下の頭部MRI画像でこの左右の聴神経(↑)は、左右の顔面神経(▲)と二重に引かれた線の様に併走しています。
左右の聴神経と顔面神経は、一緒に走行しながら頭蓋骨のトンネルを抜けてそれぞれ耳や顔面に向かって走行していきます。このトンネルを「内耳道(ないじどう)」と言います。下の写真で青い矢印が指している青い点線の部分です。この部位に聴神経腫瘍は発生します。
腫瘍は、この「内耳道」の中もしくはこの近くより発生します。画像で示されている様に初期に発見された場合は、内耳道内に腫瘍が小さく認められます(赤い↑)。わかりやすく拡大した画像が下のものです。
拡大した画像です。赤く染められた部分が聴神経腫瘍(発生初期)です。
聴神経腫瘍は、写真の様に片方の聴神経に発生します。両側に発生する頻度は5%と稀です。両側性に腫瘍は発生した場合、約半数は神経繊維腫症です。神経繊維腫症とは、家族性に認められる脳腫瘍で遺伝性疾患です。通常は、片方の聴神経に認められます。
腫瘍は、比較的硬い場合が多く黄色調を呈している事が経験上多いと思います。40歳から50歳のやや女性に多いと報告されています。
られています。報告をまとめてみると1年で約1.8-2.1mm程度と考えられます。すべての聴神経腫瘍がゆっくり増大しているわけではなく、全く大きさに変化のしない事もあります(約40%)もあります。大きくなる可能性は、約55%と考えて良いと思われます。逆に臨床的には、かなり稀であると思われますが腫瘍が小さくなっていく縮小例も約5%程度で報告されています。私自身の経験では、1人だけです。治療を受けない患者さんの人数によるのかも知れません。また、画像検査による経時的変化の報告は、経過をみる期間の長さにより変化する大きさに違いはあります。
内耳道内の聴神経腫瘍の発生初期(受診時↑)からの経過で次第に増大が確認できた画像です。受診してから3年頃より明らかな増大として確認されました。この患者さんの聴力は、全く経過で問題ありません。
この様な場合は、
1)聴力が十分残っているうちに腫瘍を治療するのか
2)腫瘍が大きくなり聴力が低下してから治療を行うか
3)聴力がなくなってから治療を行うか
について、通院中の診察ごとに担当医より治療に関わるリスク、経過をみていく未来に考えられる状態や症状、自分のタイミングで治療した際のリスクや治療の効果などをよく説明を受けながら自分で理解する事が必要だと思っています。これは、手術であろうと放射線治療であろうと同じです。放射線治療の副作用(悪影響)については、治療後かなり年数が経ってから出現してくる事が多いので特に必要だと考えます。