脳に発生する血管病変です。血管病変は、異常に拡張した毛細血管(洞様血管と呼ばれるもの)が密に集合した状態である事が特徴とされています。「海綿状」=スポンジと言われる様な組織学的形状をしている事より病名がついています。同一家族内(3等親)に2人以上いる場合は、「家族性海綿状血管腫(遺伝性)」と言われます。脳内に多発する場合は、家族性が多く若くして発症しやすいと報告されています。統計的には、家族性ではない場合が、統計より多いとされています。
脳に発生する海綿状血管腫は、人口の約0.5〜0.8%とされています。その中で、症状を呈する症例は20〜30%と報告をされています。診断されるのは、30歳代に多く、症状として出血による症状で片麻痺・構語障害・痙攣発作(けいれんほっさ)・難治性の頭痛が認められます。脳幹部にでは、強いめまいや吐き気、複視(物が2重に見える)が認められます。出血は、男性と比較すると女性に多いと報告されています。
明らかな画像所見が認められた場合は、画像による診断が行えます。しかし、病変が小さい場合は通常の脳出血と診断され、海綿状血管腫と診断されない場合もあります。診断は、頭部CT検査と頭部MRI検査で行いますが、頭部MRI検査では通常に加え別の撮影法に追加して行います。
臨床では、多く認められる疾患ではありません。めずらしい脳出血と診断されている事が、私の外来にセカンドオピニオンで来院された患者さんが少なからず認められました。また、経過観察をする方針や治療の適応やタイミングも手術経験に基づく知識も大切だと考えます。
頭部CT画像での所見(出血した場合も含む)や頭部MRI画像で所見は、海綿状血管腫の状態により比較的特徴的な所見があります。姙娠中は、海綿状血管腫は増大し、出産後に縮小するのも特徴的画像所見です。海綿状血管腫からの出血は、男性よりも女性に多いです。また、39歳以下の若年者や姙娠も出血しやすい因子に含まれます。何事もなく通常の出産をされた後に診断される事もありますが、すでに海綿状血管腫と診断された後に姙娠された場合、脳外科医と産科医に出産方法や経過観察について相談される事をお勧めします。
基本的には、手術による海綿状血管腫の摘出となります。放射線治療は、全く効果が無いと言っても過言では無い位に、強い効果は認められないというのが一般的な見解です。勿論、効果があった言う報告はありますが、稀な例外です。なぜ効果があったのか?については、学問的に証明されはいません。また、放射線照射による合併症の出現率は、通常の血管奇形に治療に比較して高いとされています。
手術は、海綿状血管腫の場所や大きさにより難易度が大きく変わります。また、海綿状血管腫の状態(周囲に存在する血管の奇形等)に対する処置は、症例毎に異なるため手術のコツであったり手術時に判断できるセンスも重要だと考えています。なぜ手術が必要なのか?も含め、きちんと手術方法やリスクが説明され、きちんと手術ができる脳外科医と判断できる事がとても大切です。